ターミナルとかコンソールの語源について整理した.
かつて,コンピュータが大型で,専門のオペレータしか操作できなかった時代,操作盤は「コンソール」と呼ばれていた.元来 「コンソール」 とは,パイプオルガンの演奏台のことだ. 大規模な電子システムの「制御盤」は巨大で,オルガンの演奏台に似ていたということだろう.
左:パイプオルガンの演奏台, 右:リレー式計算機 ETL MarkIIの制御卓 参照: 京都コンサートホール KYOTO CONCERT HALL 参照: ETL Mark II リレー式大型自動計算機-コンピュータ博物館 (情報処理学会)
初期(1950年代)のコンソールは様々なスイッチ類はついていたものの,プログラミングについては,コンピュータと直接やりとりするのではなく,パンチカードや紙テープにプログラムを打ち込み,それを読み込ませてプログラムを実行していた.
少し時代が下ると(1970年代),ブラウン管とキーボードが一体となったVDT(Video Display Terminal: ビデオ表示端末)がコンピュータ本体とシリアル通信線で接続されるようになった. これは,コンピュータシステムとしてはコンソールだが,通信系としては「端末」となる. さらに,メインコンソールだけでは高価なコンピュータの利用効率が悪いため,入力専用のシリアル端末を複数――ときには数百台設置し,コンピュータの計算を時間単位で分割して作業するシステムが誕生した(Time Sharing Systm:TSS).この入力端末が「端末=ターミナル」の語源である.
DEC社のVT100ターミナル.現在もリモート端末の標準的な動作モデルとして残っている
現在のコンピュータにおいてはコンソール(本体に直接接続)もターミナル(通信線で接続)も,本物( 直接VDTでの表示 )はほとんど見ることがない.どのOSもGUIが装備されているので,多くの業務は何らかのGUIソフトを使うことで実現できる. しかし実は,どのOSにおいても,ウィンドウシステムが起動する前の段階で,CUIで操作するモードが残されている.これは定期的なバッチ処理( 一括 )やバックグラウンドプロセスの制御など,GUIだと面倒になるタスクに有用だからである.また,システムの根幹に関わるシステムトラブル等の際には,シリアル接続等,最低限の設備で対応することが可能である.
普段はGUIを必要としないサーバでは,その制御においてもCUIで操作される場合が多い.大規模なストレージシステムやネットワークシステムのバックボーン(裏方)として, サーバ,ブリッジ,コントローラとして稼働するOSにおいては,エンドユーザが利用するようなGUIは不要だからである. 現在では本来の大型制御盤「コンソール」は存在しない. 多くの場合,シリアル回線またはEthernet回線で接続されたPCを「端末」として利用する.その際,システムの上流管理はWeb I/F(インタフェース)で操作できることが多い.しかし,システム内部に分け入って操作するにはやはりCUI端末でアクセスすることになる.
Google社のサーバルーム(2014年)
本来の入力端末はウィンドウシステムのないCUIのみだが,実際の業務では端末以外の業務も同じPCでこなす必要がある.その時はウィンドウシステムの中で,端末をそっくり真似た(エミュレートした)端末ツールを利用する.これが,**ターミナルエミュレータ――通称「ターミナル」**である.