◆デスクトップ環境は着せかえ人形

教科書第 1 章の113( p.15 )には「UNIXは文字中心」と書いてある.それは間違いではないが,今どきのUnixはウィンドウシステム( X Window )が普及し,ほとんどの場合インストールした直後からGUI環境をフルに利用することができる.つまりUnixもWindowsやMacOSと同じような操作ができるということだ.

さらに,Unixのウィンドウシステム( デスクトップ環境 )は非常にフレキシブルで,Windowsよりも選択の幅がはるかに大きい.デスクトップ環境を切り替えると'Look & Feel' ( 見た目と使い勝手 )も,まったく別物のOSのようになる.※Windows風やMac風にもできる.

※WSL環境はあくまでもWindowsの上で稼働しているので,デスクトップ環境は導入できない.

以下にデスクトップ環境の例を挙げておく.

Untitled

Untitled

Untitled

左:GNOME(Ubuntu標準),中:Xfce,右:KDE Plazma

※参照:

※これらの記事ではディストロごとに変更するように読めるが,デイストロはそのままでデスクトップ環境だけを変更できる ※ちなみに藤井はfvwm派(太古のウィンドウマネジャ)

◆シェルも着せ替え出来ます

コマンド入力を受け付けるシステムである「シェル」も変更可能.

これらインタフェースやシェルといった周辺部分を大幅に変更しても,システムの中核部分( カーネル )は同じなので,同じOSだといえるのである.

※ちなみに藤井はtcsh派(BSD系Unixで育ったので)

◆カスタマイズはUnixの真骨頂

与えられた環境の中で言われた通りに限定的な作業をするだけならば,UnixもWindowsもさして変わりはないし,どちらが優れているわけでもない.しかしUnixはツールやインタフェースの選択の余地が大きく,さらにひとつひとつのツールの設定を細かく変更できるようになっている.自分に合わせて環境や設定を変更していくことをカスタマイジング( customizing )という.

自分の入力スタイル,業務スタイルに合った設定を徹底的にカスタマイズすれば,そのユーザにとって理想的なインタフェースを構築できる.ユーザの学習が進んだり,利用環境や用途が変化すれば,それに伴って インタフェースを変更することも可能である.

◆"small tools"の思想

これらの機能の多くは,沢山の小さなプログラムからなっている.これは"small tools"と呼ばれ,"simplicity"や"KISSの法則"といった「UNIX哲学」の具現でもある.すなわち,単機能の小さなプログラムを沢山用意しておいて,それらを柔軟に組み合わせることで,さまざまなタスクに対応しようという発想である.

これこそが,巨大なアプリケーションを動かす基盤としてのWindowsやMacOSに対するUnixの強みであり,1960年代の開発当初から受け継がれてきているソフトウェア設計思想である.

このように,GUIでもCUIでも選択肢の広いUnixだが,本実習ではすでに進めている通り,もっぱらターミナルでのコマンド入力で学習を進める.

しかし,時間が許すならば,ネイティブなUnix/Linuxをインストールし,自分好みにカスタマイズしてみることをお勧めする.Windows/Macでしかできないことって案外少ないんだということに気づくとともに,自分でしっかりカスタマイズした環境は,手放せなくなるだろう.